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日本ウッドデッキ協会からコラム

ブラジルの光と影 その6

2018年5月21日

「自分の国の通貨を信用できないことは、国民の大不幸」 

今年の訪日は、桜の満開が終わる頃でした。
お客さんや友人たちからの「花びらが散ってしまわない頃に一杯飲もう」と言う誘いでしたが、私自身、桜の花があまり好きではない。
穏やかな桜の花の色よりも、原色に近い花の色が好きだ。
オランダと仕事していた頃に休日にお客さんが連れて行ってくれたチュウリップ公園の赤や黄色などの原色が、今でも網膜の底に焼き付いている。

それはともかく、一杯飲む口実は何処にでも何時でもある。
よって、何時もどうりの素晴らしい滞在を過ごしてきました。
その規則正しい日本から、その半分くらいの正確さで動くブラジルへ戻って来て、ほっとしていると、そのブラジルの半分くらいの正確さであろうと(ならば、日本の10%くらいかな?)思われる隣国アルゼンチンからの悲報が入って来た。

「政策金利を、40%に上げた」 

日本のマイナス金利は別として、アメリカなどの先進国は、3-4%である。
ブラジルは、ロシアを初めとする15%前後の超金利高の常連だったが、昨年あたりからどんどん下がり出して、今では6%前後に落ち着いてる。
新聞には
「一桁台の政策金利」と晴れがましく活字が躍る。
そして、インフレが下がり、商店の売り上げが伸び、社会の雰囲気が良くなり、それを好感して外資が入ってくる。
ブラジル国家の資金繰りが良くなるから、国民も国を信用して経済も社会も良くなっていく。
好循環となる。

 隣国アルゼンチンは、日本流で表現するなら「戦後のブラジルの経済ライバル」だった。
いや、戦前は、南米大陸のA.B.C.先進国のトップで、ブラジルの先を走っていた。
ブエノスアイレスは、南米のパリと呼ばれた華やかな首都だった。
そして何時の頃からだったか、ブラジルに引き離されて、そして、今日の大きな格差ができてしまった。
しかし、アルゼンチン人はブラジル人を蔑視する。
サッカーのライバル意識を超えて、「何がブラジルだ.田舎モンが何を言うか?!!」と言う雰囲気がある。
そのアルゼンチン人の木材屋と何回か商売したから、彼らのツッパリを第3者の日本人として、面白く観察したものだ。

その仇敵のアルゼンチンが世界最高の40%の金利となり、為替レートも、ブラジルのレアルの、六分の一に下がってしまったから、多くのブラジル人は,「ザマーみやがれ!!」と乾杯しているだろう。
レアルで換算すれば、半分の値段と
なった「ワインとアルゼンチン牛肉とタンゴの夜」のアルゼンチン旅行を楽しんで来た友人から楽しい電話がかかってきた。
ポルトアレグレ(楽しい港)に住んでいるから、ブエノスアイレスまで、バスで国境を越えて8時間の距離だ。

 その彼に、「アルゼンチン人の自国通貨」への様子を聞いた。
第2章のハイパーインフレにも書いたが、一生懸命働き、貯蓄をしてきた自国の通貨の価値が減っていく事ほど不安なことはない。
政府は突然に政策金利を、40%に引き上げた。
その理由は、国民が自国通貨のアルゼンチンペソを、ドルなどの外貨に交換しており、国庫から外貨準備金がどんどん減っているから、その防衛の為だ。

「国民の皆さん  貴方のペソの預金には、40%の金利が付くのです。外貨に交換する必要はありません」

しかし、国民は、今まで同じ様な事が何度も起こった事を覚えている。
政府を信用していない。皆が皆、ペソ売りに走る。
ペソ安になる。10日間ほどで、1ドル

25ペソになった。
25%の下落である。
1ドル=100円が、突如、125円になるごとくである。
こうした通貨不安は、ハイパーインフレを起こす。
ブラジルでも、今から30年ほど前に、同じ様な事が起こった。
ハイパーインフレは、「国民の政府に対する不信」から起こる。
通貨は、国民の政府に対する「信頼」の手段である。その信頼が無くなるという事は、「社会の混乱」となる。
それは、革命に繋がる。
ヴェネズエラのインフレが、9000%と言う。
国民の10%が、隣国へ脱出していると言う。
もう滅茶苦茶な社会になっている。
あの頃のブラジルは、2000%のインフレだったから、ヴェネズエラの様子が、手に取る様に分かる。

アルゼンチンの経済混乱の数日後、竹中平蔵さんの「通貨」に関する記事を読んだ。
彼は通貨の役割を「物の価値を決める、その決済をする、財産として保有する」と教えている。
成程、この様に簡潔化すると、学生たちの経済学テストに、「通貨の役割を書け」と出題するに便利である。
また、学生も、この3点が通貨の持つ役目だと理解する。
しかし、経済理論から離れた事態になった時、つまり、彼の生徒が明日アルゼンチンに行ったら、どの様にその現実を理解したら良いのだろうか?。

 赤ん坊連れの若い母親が、白髪の老婦人が、ATMに向かって現金を引き出してハンドバックに入れる。手の切れる様なきれいな紙幣だ。
通行人の誰もがそれを見るが、誰も注視しない。
その現金をタンス預金にする国民が増えている、あるいは、夏冬のボーナスを使わずに銀行に預金するという記事。コンビニに入って、簡単な事務用品を探していると、金色や赤色の飾りが付いたこぎれいな封筒が並んでいる。
瞬間、「あれ、これ何かな?」と不思議に思い、それは、お金を入れる熨斗袋だと気が付く。
「お金を、こんなに大事に扱っているんだ」と驚く。夏場所が始まった。
懸賞金を受け取る力士は、手刀を切る。
大事なお金を頂くことへの遠慮を表す伝統的な儀式だと本で学んだ。
だから土俵から降りると、隠す様にして付き人に渡す。
ところが、白鵬は、片手に余る分厚い束を鷲つかみにして、高く掲げる。
俺は勝負に勝ったんだと言う自己表現だろう。

 本当に、日本は、世界のやり方とは、何もかも異なる。
その平和な国から戻って来て1カ月も過ぎていないから、普段、当たり前の事として見逃すことが、まだ、脳裏に刻まれている。
「自分の国の通貨を大事にすること、国民がその様になる為の国の長い歴史と古い伝統、そして、現在の国を管理する国家のシステム」
日本人にとっては、当たり前の事だ。
しかし、今回の訪日では、特に印象に残った。
アルゼンチンがあったからだろう。

これ以外に、「人口流産」「言霊」、このテーマについて、頭がブラジルボケになる前に、急いで書きます。期待乞う。

以上。